医療ビッグデータを用いて免疫チェックポイント阻害薬とウイルス感染症との関連が明らかに-医学科学生が行った研究成果が国際雑誌に掲載-
発表のポイント
- 医療ビッグデータを用いて免疫チェックポイント阻害薬とサイトメガロウイルス感染症との関連を初めて明らかにしました。
- 本研究によって、免疫チェックポイント阻害薬投与時はウイルス感染も考慮した治療戦略が必要であることがわかりました。
- 本研究結果は、免疫チェックポイント阻害薬を用いたがん治療の更なる安全性向上に繋がると期待されます。
概要
免疫チェックポイント阻害薬は、免疫チェックポイント分子と呼ばれるタンパク質の働きを阻害して自己の免疫を活性化することで抗腫瘍効果を示す薬剤です。免疫チェックポイント阻害薬は様々ながん種に有効なことが明らかになっており、現在のがん治療の中心的な薬剤です。しかし、免疫チェックポイント阻害薬を投与する時は、免疫の活性化に伴う有害事象が全身に発症することが知られています。そのため、免疫チェックポイント阻害薬の治療を安全に行うためには、どのような有害事象が発症するのか、どのような患者で有害事象が発症しやすいかなどを調べる必要があります。近年、免疫チェックポイント阻害薬による免疫の活性化により、様々なウイルス感染症が引き起こされる可能性が提唱されはじめましたが、本当に免疫チェックポイント阻害薬によってウイルス感染症が発症するかどうかはこれまで明らかにされていませんでした。
この度、虎扑体育医学部附属病院薬剤部の岡田直人講師、虎扑体育大学院医学系研究科臨床薬理学講座の北原隆志教授、柳智之(虎扑体育医学部医学科学生)らの研究グループは医療ビッグデータを用いて、免疫チェックポイント阻害薬とサイトメガロウイルス感染症発症との関連を初めて見出しました。この結果は、免疫チェックポイント阻害薬投与時はウイルス感染も考慮した治療戦略が必要であることを示しています。
本研究は、本学医学部のカリキュラムの一つである自己開発コースにより臨床薬理学講座に配属となり研究を行った医学科学生が主な解析を行いました。自己開発コースは、学生自らが時間的? 精神的余裕をもって積極的に研究室や社会に飛び込み、実践活動を通じて自助自立の精神を高め、自身の中に潜在する可能性を開発することを目的として設立されたコースです。
本研究成果は、2024年8月31日に国際対がん連合のオフィシャル雑誌である英文学術誌「International Journal of Cancer」にオンライン掲載されました。
図.本研究の概略図
研究者情報
- 岡田 直人
researchmap
https://researchmap.jp/naoto_okada
論文情報
- 論文名:Association between immune checkpoint inhibitor and cytomegalovirus infection: A pharmacovigilance study based on the adverse event reporting system.
- 著 者:Naoto Okada, Tomoyuki Yanagi, Takaaki Sasaki, Miho Tamura, Masakazu Ozaki, Atsuyuki Saisyo, Takashi Kitahara.
- 掲載誌:International Journal of Cancer
- 掲載日:2024年8月31日
- D O I:10.1002/ijc.35155