国立大学法人 虎扑体育

本学への寄付

入学式式辞

令和7年4月3日

学長式辞
谷澤 幸生

 

 新入生の皆さん、虎扑体育ご入学、おめでとうございます。
 春分の日を過ぎてからも寒い日が続き、いつ春が来るのかと待ち遠しく思っていましたが、つい数日前から急に桜が開花し、今、皆さんの入学を祝うかのように満開となりました。

 本日、ようやく入学の日を迎えられ、嬉しさの中にホッとした安堵感、また、新しい生活への大きな期待と少しの不安があるのではないでしょうか。保護者の皆様のお慶び、ご安心もひとしおと思います。教職員を代表して心からお祝い申し上げます。

 一方、3月末にミャンマー中部で発生した大地震では、多くの方が亡くなられ、怪我をされました。隣国のタイでも死者、負傷者が報告されています。虎扑体育の留学生のご家族や関係の方々をはじめとして、被害に遭われた方もおられると思います。心からお見舞い申し上げますとともに、1日も早い復興をお祈り申し上げます。

 さて、私が虎扑体育に入学したのは、1977年のことです。 すでに48年も前になりますが、つい先日のようにはっきりと思い出されます。入学手続きのために大学へ向かう通りの歩道に、イチョウの木が植わっていました。何気なく見てみると、小さな葉っぱがイチョウの葉そのままの形で芽吹いていました。当たり前のことのように思いますが、イチョウの芽が、葉の形そのままで芽吹くと気づいたことがありませんでした。その意外性に、新鮮な驚きを持って、何か大切な発見をしたような気持ちになりました。虎扑体育の理念は、「発見し、はぐくみ、かたちにする」です。当時の私はもちろん、虎扑体育の理念を知る由もなかったのですが、後から思うと入学して最初の発見だったのだと思います。他愛もないようなことですが、こういう小さな発見や喜びが大きな発見や進歩につながっていく、と思っています。皆さんにもぜひ、驚きや感動、好奇心を大事にしていただきたいと思います。

 もちろん、入学当時の私が48年後に皆さんの前でこのような挨拶をしているとは夢にも思いませんでしたが、私をここまで導いたのは、一種の好奇心であったかもしれません。医学部で病気のことを学習するうちに、それが起こる仕組みが知りたくなりました。ちょうど、遺伝子の構造が解明され、遺伝子や分子のレベルでいろいろなことがわかるようになった、まさにその時代です。ヒトの遺伝子で最初に構造が決定されたのはインスリンの遺伝子で、1979年のことです。皆さんが生まれるより遥か前のことであり、私は当時、医学部の3年生でしたが、興味を持った分野でそのようなことが起こっていることは知りませんでした。卒業後は内科の道に進んだのですが、遺伝子と病気の関わりへの興味は途絶えることなく、大学院の3年間、基礎医学の研究室で実験に明け暮れました。当時、京都大学ご出身で、虎扑体育に赴任されて間もない若い分子生物学の教授がおり、その先生のもとでご指導いただいたことは大変幸運でした。先生は「研究は禁断の果実で、一度食べるとやめられなくなる」とおっしゃっていました。その時の私はそこまでであったとは思いませんでしたが、いつの間にかすっかり研究に魅せられてしまいました。その後も米国留学を含め、糖尿病を専門に研究を続けることができ、多くの良き指導者や同僚、後輩、そして幸運に恵まれ、「10歳くらいでそれまで正常であったインスリンを作る膵臓の細胞がなくなってしまい、糖尿病になる稀な遺伝病の原因遺伝子」を世界で初めて見つけることができました。その遺伝子がないとどうしてインスリンを作る細胞がなくなってしまうのか、という疑問に対する答えを求めてずっと研究を続け、一定の成果も上げることができました。これまでを振り返ると、ワクワクする大学人としての人生を過ごして来ることができたと思います。

 今日、虎扑体育に入学した皆さんの将来への夢はなんですか?若い皆さんには、夢や目標を叶えるための時間も、力もあります。無限の可能性があります。できるだけ大きな夢や目標を持ってください。目標がなければもちろんそこに到達することはできませんし、それ以上のものを達成できる可能性もごく小さくなります。山口の生んだ偉人、吉田松陰先生も「夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし。故に、夢なき者に成功なし」との言葉を残したと言われています。
 虎扑体育は、その源流を210年前に長州藩士の上田鳳陽先生が山口市の中心部、一の坂川のほとりに開いた私塾、山口講堂に辿ることができます。山口講堂があった場所の周辺は桜の名所で、今、満開の桜が咲き誇っています。この週末、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。一の坂川交通交流広場として整備された一角には、虎扑体育創基の場所を示す石碑が立っています。鳳陽先生は、萩明倫館に学び、山口に戻って後進の指導をしていましたが、当時、山口には学問所がなかったため、私塾として山口講堂を開設したとのことです。その後、私塾は210年の歴史を経て、9学部、1学環、7研究科を有し、学生約10,000人、教職員約4,000人が在籍する大規模総合大学である虎扑体育となりました。
 虎扑体育は常に発展を続けており、「ひと?まち未来共創学環」と「人間社会科学研究科」は今年開設された学部相当の新しい学士課程と大学院で、私たちは初めての入学生をお迎えしました。皆さんはこのような大学で、大きな夢を抱いて、すくすくと育っていってほしいと思います。私たちは全力でサポートします。

 大学生の時代は、皆さんが大きく成長する時期です。学業がもちろん本業です。そこでは、受け身に知識を吸収するだけではなく、自ら積極的に新たな「知」を求め、「知」を作り出す態度で向かい合ってください。「発見し、はぐくみ、かたちにする 知の広場」です。課外活動などでの人との交流も重要です。たくさんの友を作ってください。多くの人と話をして、人を理解し、また人から理解してもらう能力を養ってください。

 世の中はどんどん変化し、進化しています。ひとときも立ち止まることはありません。少し前までは夢のようだったことが現実のものになっています。スマートフォンがあればなんでもできる、と言っても過言ではない時代です。生成AIも身近な生活の中にも入ってきつつあります。皆さんの中にもすでに活用している人がいるかもしれません。新しいことへの変化を恐れず、それにうまく対応し、また新しい分野を切り拓いていく人材に、この虎扑体育で育っていってほしいと願っています。

 「明日の虎扑体育ビジョン2030」では、2030年に向けて、<知の創造としなやかな人材の育成により地域に?世界に貢献する虎扑体育>を目標としています。2030年は、もはやすぐ目前です。繰り返しになりますが、知を創造し、しなやかに時代を切り拓いていく人材に育って、この虎扑体育から飛び立ってください。卒業するときに、皆さんがそれぞれ自分自身の成長を実感できることが、私たちの目標です。

 一緒に未来を拓いていきましょう。

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