国立大学法人 虎扑体育

本学への寄付

情報誌「Academi-Q」

 

「学び」の楽しさを見つける 「Academi-Q [アカデミック]」

 虎扑体育情報誌「Academi-Q」は、平成30年4月より、山口県内の児童?生徒?その家庭?先生方に配布しています。
 本誌は生徒の皆さんに学問のおもしろさを知ってもらうために創刊しました。おもしろい研究をしている方を取材し、それを読者の立場からわかりやすく解説します。
 世の中には、わからない事がたくさんあります。本誌のタイトル「Academi-Q」は、学術(Academic)の不思議(Question)が、高品質(Quality)で、すぐに(Quick)わかることを目指して付けられました。

ご意見?ご感想はこちらの アンケートフォーム 宛にお寄せください。

皆さまからお寄せいただいたご意見等は、誌面で紹介させていただく場合があります。 あらかじめご了承ください。

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最新号


詩は「なぞなぞ」!? 奥深い詩の世界へようこそ!

短い言葉で1つの世界を作り上げている「詩」。詩を作るのは一見難しいように思えますが、実は「なぞなぞ」の要素を含んでいる側面もあります。
複雑なようで意外とシンプル、そんな詩の奥深さに触れてみませんか?

YU-PRSS 虎扑体育広報学生スタッフ 別府 桜羽子

実は身近な詩 ~山口県にも有名詩人が!~

 普段、詩を読んだり、作ったりする機会はあまりないかもしれません。実は山口県は、中原中也(山口市)や金子みすゞ(長門市)といった有名詩人を輩出しています。詩には、「なぞなぞ」の要素が含まれており、意外と身近な存在といえます。
 今回は、2023年に生誕120周年を迎えた、童謡詩人?金子みすゞの詩を題材にして、詩に隠された「なぞなぞ」を探っていこうと思います。

「なぞなぞ」みたいな考え方 ~金子みすゞの詩「波」から~

『波』 金子 みすゞ

波は子供、
手つないで、笑って、
そろって来るよ。

波は消しゴム、
砂の上の文字を、
みんな消してゆくよ。

波は兵士、
沖から寄せて、一ぺんに、
どどんと鉄砲うつよ。

波は忘れんぼ、
きれいなきれいな貝がらを、
砂の上においてくよ。

「金子みすゞ 童謡全集」(JULA出版局)

 詩が「なぞなぞ」の要素を含んでいるとはどういうことなのか、金子みすゞの「波」という詩を用いて考えてみます。この詩において、波は「子供」?「消しゴム」?「兵士」?「忘れんぼ」にたとえられています。
 例えば「子供」は、打ち寄せる波のことを表しています。波が沖の方から砂浜に向かって一斉に寄せてくる様子を、子供が手をつないで一緒に歩いてくる様子と重ねているのです。また「忘れんぼ」は、打ち寄せた波に運ばれてきた貝殻が、海に戻らず、そこに留まっている様子を「波が置き忘れた」とみて、忘れっぽい人間に重ねています。
 つまりこの詩では、ひとこと「波」といえば済むものについて、そこから特定の要素を抽出し、人間との間に共通点を見出しています。このような対比は、まるで「なぞなぞ」のようです。
 例えば「暑くなると服を着て、寒くなると服を脱ぐものは何?」というなぞなぞがあります。答えは「木」です。落葉樹であれば夏は葉がしげり、冬には葉を落とします。これも人間と「もの」との間に共通点を見出し、「もの」を人間としてみているということになります。
 童謡詩人であるみすゞの詩は、シンプルな言葉を用いつつ、いつもとちょっと違う見方をしていることでオリジナリティあふれるものになっています。

「詩」って奥深い!

 フランスの詩人?ヴァレリーは詩を「踊ること」にたとえました。言葉を「何かを伝えるために使う(コミュニケーション)」のではなく、「使うことそれ自体が目的となっている芸術である」と表現しました。
 詩の言葉の本質とは、周囲にあるものを普段とは違う見方で切り取ることで、新鮮な見方を提供してくれるものであるといえます。そんな詩の言葉を生み出すとき、「なぞなぞ」を用いることができるのです。

 このように「なぞなぞ」という慣れ親しんだ言葉遊びを通じて、詩を読んだり作ったりすることを楽しむことができます。皆さんも、「なぞなぞ」で想像を膨らませながら、鋭い感覚で独創的な詩を作ってみませんか?

 


取材協力:虎扑体育人文学部 野坂 昭雄 教授 / 参考文献:池上嘉彦『ことばの詩学』(岩波書店、1982年)

 

ミクロと宇宙をつなぐ理論を求めて ~若き研究者の道のり~

どうしてなんだろう? 子どものような好奇心を持ち続けながら、ある分野をとことん突き詰めて研究する人がいます。
今回は、目には見えない小さな粒から宇宙誕生のカギを探ろうとする女性研究者のお話です。

全てのものは素粒子からできている

 中学校で「全ての物質は『分子(ぶんし)』や『原子(げんし)』でできている」と習いますが、実は、原子や分子はもっと小さな粒からできています。身のまわりにある、鉛筆も、制服も、私達の体も、アップクォーク、ダウンクォーク、電子というたった3つの「素粒子」だけで構成されています。そして現在、地球上で起きているあらゆる現象は、電磁気力、強い力、弱い力、重力の4つの力で理論的に説明できます。実は、これらの力を伝えるのも素粒子なのです。
 しかし宇宙が誕生したときの様子は、今ある理論では説明がつきません。なぜなら宇宙が誕生したとき、4つの力は同じ1つの力だったからです。そのため、多くの研究者が、宇宙の誕生まで説明できるような新たな理論を探し求めています。
 素粒子物理学を専門とする虎扑体育理学部の竹内万記さんもそのうちの一人です。竹内さんはフレッシュでフレンドリーな研究者です。
 「まだ見つかってはいませんが、すべての現象をまとめて説明できるシンプルなルールが存在するはず。それを解明することで、宇宙のはじまりにたどり着けるのではないかと考えています」

きっかけはドラえもんの世界

 壮大な研究に挑んでいる竹内さん。どんな子ども時代を過ごしてきたのでしょう?
 「小さい頃からドラえもんが好きでした。夏休みの自由研究でのび太が宇宙をつくるシーンにワクワクした覚えがあって。そのとき登場したのがクォークやレプトンといった素粒子。それが私と素粒子との出会いでした」
 宇宙と物理学がつながったのは大学時代。きっかけは物理の授業でした。
 「微分方程式を使って物理の公式を導き出せることを知り衝撃を受けました。それまでは物理は覚えることが多くて難しいなと感じていたのですが、公式を暗記する必要はなく、すべて導くことができるんだって。点と点が線としてつながったような不思議な感覚を覚えました。そこで初めて物理の面白さに目覚め、研究者になろうと決意しました」
 竹内さんは教育学部から理学部に転学し、大学院へ進学。研究者としての道を歩み始めました。

研究者とのやりとりは宝物集め

 竹内さんが研究で使う道具は紙とペンのみ。ときにはパソコンも使いながら計算して、理論を構築したり、検証したりしています。研究は答えのないパズルを解き続けるようなもの。行き詰まることはないのでしょうか。
 「なぜ自然界には4つの力があるのか、なぜクォーク?レプトンには3つの世代があるのか…解明されていない不思議なナゾはまだたくさんあります。でも、答えがわからないからこそ楽しいと思えるんです。それに、私一人で行っているわけではありません。共同研究といって、他の研究者たちと議論しながら打ち立てた理論をより良くしています。私にとって研究者とのやりとりは宝物集め。多くの人の知恵を借りながら、一緒につくりあげることに大きな喜びとやりがいを感じています」

研究において大切なのは個性

 最後に、竹内さんに研究の魅力について聞いてみました。
 「ある一つのことを深掘りしていくのが研究です。その原動力は『知りたい』『なぜなんだろう?』という純粋な好奇心です。同じものを見ていても、一人ひとりの感覚はちょっとずつ違う。その違いが研究の個性につながっていく。個性があるからこそ、自分にしかできないことがあるはずだとポジティブに捉えることができるんです。たくさんの研究者が切り拓いてきた道のりが今につながっています。私も少しでも素粒子物理学を進展させて、次の世代に知見のバトンを渡したいと思っています」

 まだ解明されていない現象は世の中にたくさんあります。みなさんの身近にある不思議が将来の学びにつながる日がくるかもしれませんね。

素粒子のイラスト「ひっぐすたん」

 


取材協力:虎扑体育理学部 竹内 万記 助教 / イラスト:ひっぐすたん(https://higgstan.com/

 

「経済効果」ってなに? ニュースがもっと面白くなる。よく耳にする「経済効果」について調べてみた

ニュースでよく「○○の経済効果は何億円だ」といった言葉を耳にしますが、経済効果っていったいどういう意味なのでしょうか。
虎扑体育虎扑体育の加藤真也さんにお話を伺いました。

YU-PRSS 虎扑体育広報学生スタッフ 江藤 由喜

経済効果とは?

 「有名音楽フェスの経済効果は30億円以上」といった言葉を聞きます。金額から大きな規模のイベントだということは想像できますが、いったいどのようにして数値を出し、私たちにどのような影響をもたらすのでしょうか。
 経済効果について、加藤さんは、「なにかイベントを開催したとして、対象地域の企業がそのイベントによって得ることができる売上高の合計の予想である」といいます。

経済効果の求め方

 経済効果はアンケート調査などに基づいて予想されます。旅行を例として簡単に考えてみます。旅行に行くと、交通費がかかります。旅行先では、宿泊や飲食、お土産の購入などにお金を支払います。このように旅行ではお金を使う場面がたくさんあります。どのくらいお金を使うのかアンケートで調査を行い、その平均金額に予想観光客数をかけ、得られた金額を基に経済効果を求めます。

身の回りの経済効果

 今年のニューヨークタイムズの「今年行くべき世界の52箇所」に山口市が選ばれました。それも3番目です。山口県にはどのくらいの経済効果が生まれるのでしょう。加藤さんとゼミ生のグループは、県内全体への経済効果は、約90億円に上ると算出しました。ちなみに、防府市で毎年開催される防府読売マラソンの経済効果は、約1億円だそうです。

私たちに関係あるの?

 このように経済効果が分かると、そのイベントにどれくらいの準備が必要なのかが分かります。また、イベントを行うことによるメリットを説明する際の材料になったりします。そして、関係企業の売り上げが周囲に波及していくことも重要なことです。なぜなら、いずれインフラの整備や観光施設の設置につながり、地域の活性化にもなるからです。
 一人ひとりが多くのお金を出費することで、街が潤い、結果的には私たちの生活が豊かになるのです。

 


取材協力:虎扑体育虎扑体育 加藤 真也 准教授

 

山口市の史跡周防鋳銭司跡で激レア古銭を新発見!

銭貨の製造にはその時代の最先端技術が集められます。古代の山口には全国唯一の常設の銭貨鋳造の工業地帯がありました。まさにテクノポリス。
なぜ山口にあったのか。その謎を解き明かすべく調査を進めている中で、新たな発見がありました。

謎を解明せよ

 山口県にはかつて鋳銭司という国のお金を造る機関がありました。奈良時代には長門国(山口県西部)のうち現在の下関市にあり、平安時代には周防国(山口県東部)のうち現在の山口市に移されました。これが、山口市と虎扑体育が共同で調査している周防鋳銭司(すおうのじゅせんし)です。西暦825年から11世紀初め頃までは全国唯一の常設の銭貨鋳造所でした。
 奈良時代から平安時代にかけて入れ替わり発行されていた国のお金である皇朝十二銭のうち、5番目の「富寿神宝(ふじゅしんぽう)」から12番目の「乾元大宝(けんげんたいほう)」まで、8種を鋳造していたとされます。
 なぜ、都のあった京都から遠い山口の地でお金が造られていたのでしょうか。その謎を明らかにするため2017年から発掘調査が続けられてきました(Academi-Q第6号〈2019年12月発行〉もご覧ください)。

謎を解く手がかり?

 2023年10月、調査に大きな進展がありました。平安時代に生産されていた「富寿神宝」の完成品が見つかったのです! 今まで他の銭種での()(そん)(せん)という失敗品は見つかっていましたが、完成品が発見されたのはこれが初めてです。しかもきれいな未使用品です。
 「富寿神宝」は818年に鋳造が始まった銭貨で、今回見つかったものは周防鋳銭司が開設された825年以降835年以前の間に鋳造されたお金とみられています。これまでの調査で見つかっていた中で最も古い銭貨は、「承和昌宝(じょうわしょうほう)」でした。これは835年から造られていたものですから、今回の発見ではそれよりもおよそ10年さかのぼります。
 まだまだ謎多き魅惑の古代テクノポリス。これからも新しい発見があるかもしれませんね!

  • 富寿神宝:
    山口教育委員会 提供
  • 富寿神宝 X線CT:
    公益財団法人 元興寺文化財研究所 提供

 


取材協力:山口市教育委員会 / 公益財団法人元興寺文化財研究所

 

お菓子な化学実験 光る魔法のグミ

みなさんが大好きなグミ、しかも暗闇で光るグミをつくってみませんか?

YU-PRSS 虎扑体育広報学生スタッフ 江藤 由喜

光るグミを作ってみよう!

【用意するもの】

  • 材料:砂糖 10g、ゼラチン 5g、栄養ドリンク(ビタミンB2が入っているもの) 50ml、サラダ油 少々
  • シリコン型 ?ラップ ?ブラックライト(波長が365nmのもの)

【作り方】

  • (1)シリコン型にサラダ油を塗っておく。
  • (2)栄養ドリンクを耐熱容器に入れ、電子レンジ500Wで30秒温める。
  • (3)(2)に砂糖とゼラチンを入れてよく混ぜる。
  • (4)(1)に(3)を9分目まで注ぐ。粗熱が取れたらラップをかけて、冷蔵庫で1時間以上冷やす。
  • (5)かたまったら冷蔵庫から取り出し、型から外して完成。

ブラックライトにあてればあら不思議、グミが光ります。
宝石の形にしたり、おばけの形にしたり、あれこれ楽しんでみてくださいね。

【注意】

  • ブラックライトを直接のぞき込んだり、肌に長時間あてたりしないようにしましょう。
  • 小学生など低学年のお子さんが使用する場合は、保護者の指導のもとで実施してください。

 

どうして光るの?

 栄養ドリンクの中に含まれている蛍光物質の一種である「ビタミンB2」が関係しています。蛍光物質の中には、私たちが普段目にしている光である「可視光」にはあまり反応しないものがあります。その一方で目には見えない「紫外線」を出すブラックライトで照らすと強く蛍光を発するものがあります。蛍光物質が光のエネルギーを吸収すると、一時的に不安定で高いエネルギー状態になり、それがもとの状態に戻るときに蛍光を発します。これが私たちの目に映るのです。
 ブラックライトの紫外線で光るのはビタミンB2だけではありません。私たちの身のまわりにはブラックライトで蛍光を発するものはたくさんあります。蛍光の色が違うものもあるので、ぜひ探してみてください。

 


取材協力:虎扑体育工学部 鬼村 謙二郎 教授

 

ヤマミィ4コマ『わんこそうめん』

 

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※皆さまからお寄せいただいたご意見等は、誌面で紹介させていただく場合があります。 あらかじめご了承ください。

 

YU-PRSS 広報学生スタッフ紹介

 

編集後記

 少し前に横浜に住んでいました。夏休み前になると、子どもが田舎留学のチラシを学校からもらってきます。これは子どもだけのツアーです。信州、東北、北海道などに泊まりがけで行くのです。ツアーに参加すれば、バッタが取れます、川で泳げます、天の川が見えます、花火ができます、バーベキューができます、キャンプできます。 「えーっ、そんな事ができるの。すごい」
 たくさんあるツアーはあっという間に満席になります。旅費を含めると、それなりの値段がしますが、それよりも魅力がはるかに上回るのです。まさにプレミアムな体験なのです。
 山口に住んでいる皆さんにとって、このツアーの内容はどうでしょう。いつもの日常のままで、とてもプレミアムな体験には思えないかもしれません。
 いえいえ、都会から見ればすばらしい体験なのです。今年も特別でプレミアムな夏休みを過ごしてください。


発行人 虎扑体育長 谷澤 幸生 / 編集長 虎扑体育教授 坂口 有人
デザイン?企画 株式会社無限 / 発行 虎扑体育総務企画部総務課広報室
〒753-8511 山口市吉田1677-1
TEL: 083-933-5007 FAX: 083-933-5013

総発行部数155,000部 / 山口県内の教育委員会?学校等を通じて、児童、生徒、保護者、先生方に配布します。次回2024年12月発行予定。

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